彫刻

木地に彫刻刀で彫る。
アルベキ社では、大きく分けて二つの彫刻を使い分けます。

造形彫刻
サイン、看板等に使われる切り文字によく使います。
筆の流れ、かすれ、力の入り具合、濃淡などを彫刻塗で表現するために、塗り重ねた場合を想定しながら彫っていきます。彫り方、彫り形状、用途による強度の保持などを考慮しつつ造形し、なおかつ、それを塗り重ねる、加飾する際に出てくる限定条件をクリアするための彫刻師とのすり合わせがポイントです。彫刻と塗りの接点は入念な打ち合わせにより確立されています。

描写彫刻
柄物やテクスチャーを作るための彫刻をいいます。
木地の表面に凹凸を作り、そこに塗り重ねるための下準備です。
テクスチャーをつける際の連続模様の中に乱彫りがあります。
乱彫りは文字通り、ノミによる連続模様をランダムに施す彫り方で、代表的なものに流し彫、トントン彫があります。
流し彫とは丸刀を線状に同方向に彫っていく乱彫りで、昔から水の流れや雲の流れなどを表現する際に使われることが多い彫り方です。
トントン彫は浅丸刀で彫様が多角形になる乱彫りで、こちらは葉脈や岩肌、土肌、雲肌などに使われていました。
乱彫り全般に言えますが主に背景などに使われていた表情をアルベキ社ではテクスチャーとして提案しています。

和紙貼

木地表面に和紙を貼り、凹凸をつけます。

漆器の箱物などでは和紙や布を貼り、その上に塗り重ね埋めることで強度を上げます。その和紙が埋まりきる前に塗り重ねるのをやめ、その表情を出したまま完成させると和紙の柔らかい表情を表現できます。
和紙にも多くの技法がありますが、楮(こうぞ)の繊維を見えるほど残したものや、落水で薄い、厚い部分を作る技法、型漉など、和紙に凹凸をつける技法は様々です。
中には染み込み具合の違いを応用したり、塗りとの相性はよく幅の広い表現ができます。
どこまで埋めるかは塗師屋の感覚で行う場合が多いですが、塗り加減、研ぎ加減で微妙に表情が変わります。また目的に応じて、たとえばアートパネルではあまり埋めずとも良かったり、プロダクトの場合はしっかり埋めてないと、であったり、作るものによって合わせていきます。一見和紙と分るものから、分からないもの、実は和紙なんですよとお伝えするとびっくりされる場合も多くあります。
また和紙の切り方にもいろいろあり、ちぎる、切る、かたどるで手法を切り替えます。
ちぎり方も奥が深くちぎれ目の繊維を出したい場合などは特注和紙を紙漉の段階で精査します。切り方もいろいろで漉くとき切りやすくすることも可能ですし、機械で切る方法も量産や単品製作、複雑形状かどうかで選びます。
富山県南砺市の五箇山和紙でも特注和紙の製作に協力いただいており、こちらの意図にこたえていただいています。。

研ぎ出し

塗り重ねた後、研ぐことで下の色を出していく技法です。

よく言う根来塗(ねごろぬり)とは黒の上に朱を塗って乾いた後に研ぎ、下に埋まった黒を出すもの。曙塗(あけぼのぬり)とはその逆で朱の上に黒を塗り研ぎ出したものを言います。アルベキ社では朱と黒だけの場合が少なく、研ぎ出し、とまとめています。
研ぎ出しにも大きく分けて平面での研ぎ出しと立体での研ぎ出しがあり、表情が違います。
平面研ぎ出しによる表情は筆やたたきやスパッタリングなど他の技法とも違う独特のかすれ感が出せ、雲を表現する場合などにも多く使われてきました。塗師屋の研ぎ加減によりまったく同じものがつくりにくいのも特徴の一つです。

立体研ぎ出しでは凹凸のある表面に塗り重ね、凸部分に下の色が出てくるように研ぎ出します。凹凸に順じて模様が浮かび上がってくる瞬間は作り手側も楽しさと緊張が入り混じる、とてもパリッとした空気感が漂う瞬間です。
また凹凸をつける段階で最終形がほぼ決まるので非常に経験値の必要な技法です。
塗り方、研ぎ方、などで調整できる場合もありますがテクスチャーを採択する際にはとても多くの試作が必要になる場合が多々あります。

布貼

木地表面に布を貼り、凹凸をつけます

木地表面に布を貼り、凹凸をつけます。
漆器の箱物などでは和紙や布を貼り、その上に塗り重ね埋めることで強度を上げます。その布が埋まりきる前に塗り重ねるのをやめ、その表情を出したまま完成させると布の折り目などを残し柔らかい表情を表現できます。
どこまで埋めるかは塗師屋の感覚で行う場合が多いですが、塗り加減、研ぎ加減で微妙に表情が変わります。また目的に応じて、たとえばアートパネルではあまり埋めずとも良かったり、プロダクトの場合はしっかり埋めてないと、であったり、作るものによって合わせていきます。布の材質上使えないものも結構ありますが、多く使うのは麻布、寒冷紗です。
麻布のよれ感は厚みと丸みを感じさせ、柔らかいイメージでも使います。
寒冷紗は格子模様を強調したいときに使います。
布の深い部分(谷の部分)との落差があるので、溜塗りとの相性も良く、赤溜、白溜、白檀塗などと組み合わせる場合が多いです。